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コラム
地下工事の守り神!知られざる「山留め」の世界 全5回

第2回:陸上の山留め「土留め」の色々~壁の種類編~
山留工事の全体像をご紹介した第1回に続き、今回は陸上での地下工事で活躍する**「土留壁」の様々な種類**に焦点を当てます。
土留壁は、その構造や使用する材料によっていくつかのタイプに分けられます。
- 簡易土留壁:比較的簡単な構造の土留め壁です。
- 親杭横矢板土留壁:H形鋼などの親杭を一定間隔で地盤に打ち込み、その間に横矢板という板を落とし込んで壁を構成する工法です。開水性、つまり水を完全に遮断する能力は期待できません。この工法は、主に地下水位が低い場所や、排水作業(水替工)で地下水位を十分に下げられる場合に採用されます。掘削に合わせて横矢板を挿入していくため、地盤が乱れたり、雨の影響を受けたりしやすい側面もあります。そして土留壁の根入れ部(地中に埋まっている部分)においては、粘性土であれば土の粘着力を側面の抵抗力として考慮できる場合がありますが、施工で地盤が乱れる可能性がある場合は無視することもあります。親杭の間隔は、1.0mから1.2mの範囲とすることが多いです。
- 鋼矢板土留壁:鋼製の矢板と呼ばれる部材を、一枚ずつまたは連結して地盤に打ち込んだり圧入したりして連続した壁を構築する工法です。鋼矢板は打ち込み時の振動・騒音 や汚濁水の発生 が課題となることもありますが、ジェットやオーガを併用するなどの改良工法もあります。そして鋼矢板は継手構造によって遮水性を持たせることが可能です。重要な仮設工事の場合には、ある程度断面性能の高いⅢ型以上の鋼矢板を使用することが標準とされています。現場で矢板を継ぎ足す場合は、応力の大きい場所を避け、隣接する継手と上下に1m以上離して千鳥に配置するなどの注意が必要です。
- SMW(柱列式連続地中壁):原地盤を固化材で改良したり、原地盤と固化材を混ぜ合わせたりして、形鋼などの芯材を挿入して作る連続した土留め壁です。掘削で発生した泥水を固めて壁にする泥水固化壁もこれに含まれます。遮水性が高いのが特徴です。
- 連続地中壁:安定液を用いて壁状の溝を掘削し、鉄筋かごを設置して現場でコンクリートを打ち込んで作る連続した土留め壁です。こちらも遮水性に優れています。
- ソイルセメント壁:ソイルセメント(土とセメント系固化材を混ぜ合わせたもの)を用いて作る土留め壁です。こちらも遮水性があります。
これらの工法は、それぞれ得意な地盤条件や遮水性能、施工時の影響(騒音、振動、汚濁水など)が異なります。そのため、工事現場の状況に最も適した工法を選択することが非常に重要になります。
さらにサンヨーコーポレーションでは、白川工業様と協力して無芯連続壁であるPIE工法も取り扱っており。現地の状況に応じて、様々な提案を行い、施工性と経済性を高める事で貢献出来ております。
次回は、土留め壁をどのようにして支えるか、その「支保工形式」について見ていきましょう。
多様な地盤条件や周辺環境に対応できるよう、様々な土留め工法に関する知見と技術を持っています。安全な工事計画なら、私たちにご相談ください。