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2025.06.12

ボーリング調査って面白い!安全な暮らしの土台を知るコラム(全5回)

第5回:ボーリング調査の結果はこう活かされる!~未来を予測するレポート~

さて、ここまで4回にわたって、ボーリング調査がどうやって行われ、標準貫入試験でN値を測ったり、土をサンプリングして室内で様々な試験をしたり、液状化の可能性を調べたりすることを見てきました。

ボーリング調査で得られる情報は、地下の様子を読み解くための、まさに宝の山です。最終回となる今回は、これらの情報がどのようにまとめられ、私たちの建物を建てるための設計や工事に活かされていくのかをご紹介します!

調査結果は「報告書」にまとまる!

ボーリング調査や室内土質試験など、一連の地盤調査が終わると、その結果は詳しく記載された「調査報告書」としてまとめられます。報告書には、調査を行った場所や目的、方法といった基本的な情報はもちろん、以下のような地下の「見える化」された情報が盛り込まれています。

  • 柱状図(ちゅうじょうず):ボーリングで孔を掘った際に、どの深さにどんな地層があったのか、土の種類は何か、礫(れき:石ころ)は含まれているか、地下水位はどこか、といった情報が1本の柱のような図にまとめられています。N値のグラフなども一緒に描かれていることが多いです。まさに、地下の様子を表す「地盤の健康カルテ」のようなものです。
  • 土質試験結果:採取した土の室内試験(粒度試験や一軸圧縮試験など)の結果が一覧になっています。
  • 地層想定断面図:複数のボーリング調査を行った場合、それらの地点の柱状図と、予備調査で集めた資料(古い地図や空中写真など)を組み合わせて、地下の地層がどのように広がっているかを断面図として描き起こしたものです。点の情報である柱状図を、面として把握するための大切な図です。

調査結果はどうやって活かされるの?

調査報告書にまとめられた情報は、建物の設計や工事を行う技術者にとって、なくてはならない「設計図書」の一部となります。これらの情報から、地盤の専門家や設計者は様々な検討を行い、安全な建物を作るための重要な判断を行います。

  • 建物を支える「基礎」の設計:建物全体の重さを、どの地盤に、どのような方法で伝えるかを決めます。地盤が硬くて強い場合は、建物の重さを直接地面に伝える「直接基礎」が良いでしょう。しかし、軟らかい層がある場合は、建物の重さを硬い地層(支持層)まで杭で伝える「杭基礎」が必要になることもあります。ボーリング調査で支持層の深さや、杭の支持力(杭がどれだけ重さを支えられるか)を検討します。
  • 建物の「沈下」予測:特に軟らかい粘性土の層がある場合、建物の重みで地盤がゆっくりと沈下(圧密沈下)することがあります。室内で行った圧密試験の結果などから、どれくらい沈むか、沈み終わるまでにどれくらい時間がかかるかを予測し、建物の構造や基礎の設計に反映させます。
  • 「液状化」対策の検討:もし液状化しやすい地盤と判定された場合、そのまま建物を建てると地震時に被害を受ける可能性があります。ボーリング調査結果に基づき、液状化を防ぐための地盤改良工事(砂を締め固めたり、薬液を注入したり)が必要かどうか、どんな方法が良いかを検討します。
  • 地下を掘る時の注意点:建物の地下部分を作ったり、基礎を造るために地面を掘ったり(根切り)する際、掘る面の地盤が崩れてこないか(根切り面の安定)を検討します。ボーリング調査で分かる地盤の強さなどが参考になります。

このように、ボーリング調査で得られた一つ一つの情報は、建物の「設計用土質定数」という数値に変換されたりしながら、様々な計算や検討の基礎となり、私たちの建物の安全性を確保するために活かされているのです。

ボーリング調査の隠れた工夫も

余談ですが、ボーリング調査を行う際には、いくつかの工夫も凝らされています。例えば、標準貫入試験を行うと、その場所の土が少し乱れてしまいます。もし、特定の深さの軟らかい層で、N値だけでなく孔内水平載荷試験(別のコラムで少し触れた、孔の側壁を押して変形を測る試験)も行いたい、という場合、標準貫入試験をした場所では正確な試験ができないため、そのすぐ隣に改めてボーリング孔を掘って試験をすることもあります。

また、特に軟らかい地盤では、ボーリング孔の壁が崩れてこないように、「ケーシングチューブ」という筒を孔に沿って入れて保護しながら作業を進めることも多いです。

安心・安全な建物は、地下を知ることから

全5回にわたり、地盤調査、特にボーリング調査の世界を少し覗いてみました。普段は目にすることのない地下の世界ですが、私たちの生活の安全・安心は、この地盤と、それを正確に把握する地盤調査にかかっていると言っても過言ではありません。

ボーリング調査は、単に地面に孔を掘るだけでなく、様々な技術や工夫を駆使して、地下の貴重な情報を集める大切なプロセスです。そして、その情報をもとに、私たちは建物を建てる場所の地盤を理解し、適切な設計や工事を行うことができるのです。

このコラムが、皆さんが地盤調査やボーリング調査に少しでも興味を持つきっかけになれば嬉しいです!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

気になる地域のボーリングデータお問合せはhttps://www.sanyo-corp510.co.jp/contact/