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2025.06.02

ボーリング調査って面白い!安全な暮らしの土台を知るコラム(全5回)

第4回:知っておきたい!地盤の「天敵」!「液状化」とボーリング調査

大きな地震が起こった時に、「液状化」という現象を耳にすることがありますね。地面から水と一緒に砂が吹き出したり、建物が傾いてしまったり…とても怖い現象です。実は、ボーリング調査は、この液状化しやすい地盤かどうかを判定する上でも、とても重要な役割を担っているんです。

今回は、液状化の仕組みと、ボーリング調査による液状化の判定について見ていきましょう。

液状化ってどんな現象?

液状化は、地震の揺れによって、地下にある水をたくさん含んだ砂の層が、固い状態から一時的に液体のようになる現象です。

砂の粒子と粒子の間には隙間があり、普段はその隙間に水や空気が入っています。砂浜をイメージしてみてください。足で踏むとキュッと固く締まりますよね?これは、砂の粒子が互いに支え合っているからです。

ところが、地震の強い揺れを受けると、砂の粒子がバラバラになり、隙間に入っていた水の圧力(間隙水圧)が急激に上昇します。水の圧力が高まると、砂の粒子同士が支え合う力が失われて、まるで液体のようにドロドロになってしまうのです。これが「液状化」です。

液状化が起こると、地盤の上に建っていた建物が沈んだり、傾いたり、地下に埋まっていたマンホールなどが浮き上がってきたりします。

どんな地盤が液状化しやすいの?

液状化しやすい地盤には、いくつかの特徴があります。

  • 砂地盤であること:粘土や礫(大きな石)が多い地盤では液状化は起こりにくいです。
  • 水をたくさん含んでいること:地下水位が高く、砂の層が地下水で満たされている(飽和している)必要があります。
  • 比較的「緩い」状態であること:N値が小さい、つまり締まりが悪い砂の層は液状化しやすい傾向があります。特にN値が10以下の砂は要注意と言われています。
  • 粒の大きさが比較的揃っていること:粒の大きさにバラつきがなく、同じような大きさの粒が多い砂(分級された土)は、締まりにくく液状化しやすい性質があります。粒度分析で分かる「均等係数」なども判定に使われます。

要するに、「地下水位が高くて、緩くて、粒の揃った砂の層」が液状化しやすい、ということです。水源に近い場所や、昔、川や海だった場所を埋め立てて造成した土地などは、このような地盤になっていることがあります。

ボーリング調査で液状化の可能性を調べる!

液状化しやすい地盤かどうかを判定するために、ボーリング調査はとても有効です。ボーリング調査を行うことで、液状化判定に必要な以下の情報をまとめて得ることができるからです。

  1. 地下の地層の重なり方:液状化しやすい砂の層がどこにあるか、その厚さはどのくらいかを確認します。
  2. 地下水位:砂の層が地下水で満たされているかを確認します。
  3. 標準貫入試験によるN値:砂の層の締まり具合を把握します。
  4. サンプリングした土の室内試験(粒度分析など):砂の粒の大きさがどうなっているか(粒度)、粘土などの細かな粒がどれくらい混じっているか(細粒分含有率など)を詳しく調べます。

これらの情報を使って、専門家が各層の液状化に対する「安全率(FL値)」などを計算し、地盤全体の液状化による影響(地表の沈下量や液状化の程度を示す指標)を予測します。戸建て住宅などの宅地では、ボーリング調査の結果に基づいて、液状化による被害の可能性を3つのランク(A, B, C)で簡易的に判定する方法も定められています。

ただし、この判定はあくまで目安であり、被害の有無や程度を保証するものではない、ということは知っておきたい点です。

より詳細な液状化の予測が必要な場合は、特別なサンプリング(凍結サンプリングなど)で乱さない砂の試料を採取し、室内で地震時の揺れを再現する「繰返し非排水三軸試験」といった難しい試験を行うこともあります。

液状化は、私たちが見る地面の下で起こる現象ですが、ボーリング調査をすることで、その危険性を事前に把握し、適切な対策を検討することができるのです。

さて、全5回コラムの最終回、次回は、ボーリング調査で得られたこれらの様々な情報が、最終的にどのように活用されて、私たちの建物の設計や工事に繋がっていくのかをご紹介します!