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コラム

2025.11.21

場所打ち杭ってどんな杭?~建物を支える見えない巨人~ 全5回

鉄筋かごの「骨格」と施工管理の要点~トラブルを防ぐ現場の知恵~

ウェブサイトをご覧の皆様、こんにちは!

これまで、場所打ち杭の「安定液」や「コンクリート打設」、そして「地盤」について掘り下げてきました。さて最終回となる今回は、杭の強度を支える**「鉄筋かご」の重要性と、現場での様々なトラブルを未然に防ぐための「施工管理の要点」**について、総合的にご紹介します。

1. 杭の「骨格」鉄筋かごの設計と管理

場所打ち杭の強度と耐久性を決定づけるのは、コンクリートだけでなく、その中に組み込まれる鉄筋かごです。そして鉄筋かごの品質は、設計段階から施工性への配慮を含めて厳密に管理する必要があります。

鉄筋のあき寸法:コンクリートが鉄筋かごの内部から外側の孔壁まで十分に流動するためには、鉄筋同士の間隔が重要です。主筋の純間隔は100mm以上確保することが望ましいとされています。**「鉄筋間隔」と「あき(純間隔)」**は混同されやすいため、鉄筋の有効寸法である純間隔での管理が推奨されます。杭頭部の帯筋についても、目安として150mm以上のあきを確保することが大切です。図面上のあき寸法が不足する場合は、束ね筋の採用、鉄筋径を太くして本数を減らす、帯筋の間隔を広げるなどの対策が検討されます。また、杭頭部は補強鋼材などの取り付けが多くなるため、事前に密な検討が必要です。

スペーサーの配置:鉄筋かごが孔内で偏心したり傾斜したりするのを防ぐために、スペーサーを適切に配置することが不可欠です。スペーサーは、杭径に応じて同一深さの円周方向に4~8箇所以上かつ偶数個取り付けることが推奨されます。特に杭径が大きい場合は最上部のスペーサーの数を標準の2倍とすることも考慮されます。不適切なスペーサー配置や設置数不足は、鉄筋かごの傾斜・偏りにつながり、「鉄筋被り不足」という不具合の主要な原因となるため、スペーサーの適切な計画と施工が極めて有効な対策となります。

軸部の短い拡底杭では、拡底部掘削後に有効なスペーサーの数が極端に少なくなるため、鉄筋かごが軽いとコンクリート打設時に傾斜するリスクがあります。このような場合は、**コンクリート打設時の鉄筋かごの傾斜対策(保持方法)**を事前に協議しておく必要があります。

2. 現場の「土台」を固める施工管理の要点

場所打ち杭工事では、上記以外にも多くの管理項目が品質確保に欠かせません。現場でトラブルを未然に防ぐための具体的な要点をいくつかご紹介します。

表層地盤の安定性確保(崩壊対策):表層の掘削や表層ケーシングを建込む際に周囲の地盤が崩壊すると、ケーシングの芯ずれや傾斜が生じやすくなります。これにより、杭芯ずれや杭頭不良につながる可能性があります。崩壊が懸念される地盤では、表層改良などの対策を施すことが重要です。

表層ケーシングの長さ:緩い砂層、逸水が懸念される地盤、既存の地下構造物や基礎を解体して埋戻した地盤など、安定液のみによる孔壁保護が困難と考えられる場合は、下部の安定した地山まで表層ケーシングを挿入する必要があります。施工前に専門業者と十分に協議し、適切な長さを決定することが重要です。

表層ケーシングの据付けと掘削時の精度管理:表層ケーシングは掘削の定規となるため、その据付精度は極めて重要です。掘削中はトランシットなどでケリーバの鉛直性を随時確認し、回転速度を落とすなどして慎重に掘削を行う必要があります。

掘削速度・バケットの引き上げ速度:地盤条件(土質、硬軟)に応じて適切な掘削やバケットの引き上げ速度を設定します。引き上げ速度が速すぎると、地盤とバケットの間にバキューム現象が生じたり、安定液に急激な流れが発生したりして、孔壁を崩壊させる危険性があります。特に緩い砂質土地盤では細心の注意が必要です。

支持層確認:試験杭では1mピッチでバケットで採取した土塊を、ボーリング調査時の土質試料や柱状図の記事と照合します。支持層付近では掘削速度を落として丁寧に掘削し、重機オペレーターと感触をやりとりしながら、掘削深さとその状況を記録します。最終的な掘削深さの確認は基準点から直接レベルで測定し、全ての杭で実施することが求められます。

孔壁精度:杭径、鉛直精度、掘削時の孔壁の状態(大きな崩壊の有無)を確認するため、孔壁測定は全数実施することが推奨されます。これにより、品質管理の記録を確実に残すことができます。

検測と2次スライム処理:1次スライム処理で良液置換を実施した場合、トレミー管建込み後の検測でスライム厚さが管理値未満であれば、2次スライム処理は不要とすることができます。良液置換を行わない場合は、2次スライム処理を必ず実施し、孔底のスライムを徹底的に除去します。

まとめ

場所打ちコンクリート杭は、地中深くに埋められる「見えない巨人」であるがゆえに、その品質は緻密な計画と、現場での徹底した管理によって初めて確保されます。特に、地盤の特性を見極め、安定液やコンクリート、鉄筋かごといった主要構成要素を適切に管理し、常に最善の施工を追求することが、建物の安全と信頼を支える基盤となります。サンヨーコーポレーションは、これらの管理ポイントを深く理解し、実践することで、高品質な場所打ち杭の施工に取り組んでいます。

この連載コラムを通じて、場所打ちコンクリート杭という普段目にすることのない基礎構造について、少しでも理解を深めていただけたなら幸いです。

杭工事でお困りのことがありましたら我々サンヨーコーポレーションに是非お問合せください。