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コラム
地下工事の守り神!知られざる「山留め」の世界 全5回

第4回:水中工事の頼れる壁「締切り」
前回までは陸上での土留めについて見てきましたが、今回は水の中で掘削作業を行う際に必要となる「締切り(しめきり)」についてご紹介します。
さて締切というのは、橋の橋脚を川の中に作る工事などで、水に邪魔されずに作業するための「水の壁」を作るイメージです。
「締切り」は、水中で掘削する場所を完全に囲い込むことによって、周りからの土圧と水圧に抵抗する役割を持つ仮設構造物です。
締切り工法は、主に以下の種類に分けられます。
- 1重締切り:鋼矢板などを一列に並べて囲い込むシンプルな形式です。
- 2重締切り:鋼矢板などを二列に並べ、その間に土砂などを詰めて囲い込む形式です。こちらはより高い遮水性や安定性が得られます。
そして特に河川工事などでよく用いられるのが、鋼矢板二重式工法による仮締切りです。
鋼矢板二重式工法の構成要素としては、鋼矢板の壁が二列あり、さらにその間に中詰土砂が詰められ、腹起しやタイロッドといった部材で構造を補強します。
この工法の設計においては、重要な検討事項がいくつかあります。
- 設計対象水位:仮締切りが、工事期間中に想定される最も高い水位に耐えられるように設計する必要があります。堤防を開削(切り崩す)工事を伴うか伴わないか、工事期間が出水期(雨が多く川が増水しやすい時期)か非出水期か などによって、設定する設計対象水位の考え方が異なります。過去の最高水位や大流量データ、河川の水面勾配の変化 などを考慮して慎重に決定されます。
- 高さ:仮締切りの高さは、設定した設計対象水位に余裕高(波や流れの影響などを考慮した上乗せ分)を加えた高さ以上とするのが一般的です。ただし、既設の堤防がそれより低い場合は、既設堤防高に合わせることもあります。
- 幅:鋼矢板二重式の場合、壁体の安定計算で必要な幅を確保します。仮締切りの上を工事用道路として使う場合は、工事用道路として必要な幅のうち、大きい方を採用します。
- 許容応力度:堤防開削を伴う仮締切りは非常に重要度が高いため、仮設構造物であっても材料の許容応力度を割り増さずに設計する場合もあります。
- 流下能力の確保:河川内に仮締切りを設置することで、川の流れの断面積が変わります。そのため、仮締切りを設置した後でも、川全体の流下能力が確保されているかを確認する必要があります。不足する場合は、川底を掘る(河道掘削)などの対策を行います。
- 周辺河川管理施設等への影響:仮締切りが、近くにある他の護岸や堤防などの構造物に悪影響を与えないよう配慮が必要です。
または、比較的小さな流量の河川で一時的に水域をドライにしたり、工事場所へ渡るために仮設の構造物が必要な場合には、**瀬替工(せがえこう)や渡河工(とかこう)**といった工法が選択されることもあります。瀬替工は一時的に川の流れを変える方法、渡河工は川に仮設の橋や水路を設けて渡る方法です。
次回は、山留め工事の安全性や、周辺環境への配慮について、さらに詳しく掘り下げていきます。
サンヨーコーポレーションは、河川工事など水域での仮締切り工事においても豊富な実績と高い技術力を持っています。安全な施工計画はもちろん、周辺環境への影響にも最大限配慮して工事を行います。水の近くでの工事をご検討の際は、ぜひサンヨーコーポレーションにご相談ください。