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コラム

2025.05.16

ボーリング調査って面白い!安全な暮らしの土台を知るコラム(全5回)

第3回:地盤の「素顔」を知る!サンプリングと室内土質試験

ボーリング調査の大きな目的の一つは、地下の地層の様子を見ることでしたね。そして、標準貫入試験で地盤の硬さや締まり具合を示すN値を測ることも分かりました。今回は、もう一歩踏み込んで、地下の土を実際に手にとって観察したり、実験したりする方法をご紹介します。それが「サンプリング(試料採取)」と「室内土質試験」です。

地盤の土を持って帰ろう!「サンプリング」

ボーリング調査では、掘り進めながら、特定の深さで地盤の土を採取します。これを「サンプリング」と言います。採取した土は、地層の様子を直接目で見て確認したり、後で行う様々な「室内土質試験」に使うために持ち帰ります。

土のサンプルには、大きく分けて2種類あります。

  1. 乱した試料(撹乱試料):地盤の中での状態が多少変わってしまっても構わない試料です。標準貫入試験でサンプラーに中に入ってくる土は、基本的にこの「乱した試料」として扱われます。地層の確認や、土の種類を大まかに知るために使われます。
  2. 乱さない試料(不撹乱試料):こちらは、地盤の中にあった時の状態をできるだけそのまま保つように採取された、とても貴重な試料です。

なぜ「乱さない試料」が大切なの?

乱さない試料が必要なのは、土が地盤の中で持っている「力学的な性質」を正確に知りたいからです。例えば、土がどれくらいの重さに耐えられるか(強さ)や、どれくらい沈むか(圧縮性)といった性質は、土の粒子の並び方や水分の状態によって大きく変わります。乱れてしまうと、地盤の中にあった時の本当の性質が分からなくなってしまうのです。

特に、粘性土(ねばねばした土)の沈下(圧密沈下)を予測したり、土の正確な強さを測る「力学試験」を行うには、この「乱さない試料」がどうしても必要になります。

どうやってサンプリングするの?

土の種類(砂っぽいか粘土っぽいか)や、地盤の硬さ(N値)によって、採取に使われる道具(サンプラー)や方法が変わります。

  • シンウォールサンプラー:軟らかい粘性土(N値が4以下くらい)から、乱れが少ない試料を採取するのに使われます。薄い金属の筒を静かに地盤に押し込んで、筒の中に土を入れて採取します。
  • トリプルサンプラー:硬めの粘性土や砂質土を採取するのに使われます。筒が3重構造になっていて、掘削しながら中の筒に土が乱れにくいように入る工夫がされています。

砂や砂礫(砂利っぽい土)は、粒がバラバラになりやすいため、乱さない試料を採取するのが特に難しいとされてきました。でも、地震による液状化の研究などのために、砂の乱さない試料採取の重要性が高まり、技術が進んでいます。中には、地盤ごと凍らせてカチカチのまま採取する「原位置凍結サンプリング法」なんて方法も考案されています!

持って帰った土を詳しく調べよう!「室内土質試験」

サンプリングで採取した土は、ボーリング調査の現場から持ち帰って、専門の試験室で様々な実験にかけられます。これが「室内土質試験」です。室内土質試験には、目的によってたくさんの種類があります。

  • 物理試験:土がどんな「状態」で、どんな「種類」の土なのかを知るための試験です。
    • 粒度試験:土の粒(土粒子)の大きさごとに、どれくらいの割合で混じり合っているかを調べます。土の粒の大きさのバランスは、水を通しやすさ(透水性)や、地震の時の液状化のしやすさなどに関係します。ふるいを使って大きな粒を分けたり、水の中で粒が沈む速さを測ったりして調べます。
    • 含水比試験:土の中にどれくらいの水が含まれているかを調べます。
    • 液性限界・塑性限界試験:粘性土を対象に、土が「ドロドロの液体状」になる境目の水分量(液性限界)と、「ポロポロと崩れる半固体状」になる境目の水分量(塑性限界)を調べます。これを知ると、粘性土がどれくらいねばり気があるか、どれくらい柔らかいか(コンシステンシー)が分かります。
  • 力学試験:土がどれくらいの重さに耐えられるか(強さ)や、どれくらい縮むか(圧縮性)といった「力学的な性質」を調べる試験です。乱れの少ない試料が主に使われます。
    • 一軸圧縮試験:円柱状に整えた土のサンプルを、縦方向に押しつぶして強さを測ります。粘性土の強さ(一軸圧縮強さ)などが分かります。
    • 三軸圧縮試験:土のサンプルに、周りからと上から、両方から力をかけて強さを測ります。土の粘着力や、砂などの摩擦の強さ(せん断抵抗角)といった、地盤の強さを表す重要な数値が得られます。
    • 圧密試験:粘性土のサンプルに重りをかけて、どれくらい時間が経つとどれくらい縮むか(圧縮性)を調べます。建物の重みで地盤が沈む量や、沈み終わるまでの時間を予測するために使われます。

その他にも、土の振動する特性を調べる「動的試験」 や、土の化学的な性質を調べる「化学試験」 など、様々な室内土質試験があります。

これらのサンプリングや室内土質試験によって、N値だけでは分からない、地盤のより詳しい「素顔」を知ることができるのです。

次回は、多くの人が気になる「液状化」と、ボーリング調査がどう関わっているのかを深掘りします!